石崎博志著『しまくとぅばの課外授業-琉球語の歴史を眺める-』

 石崎博志著『しまくとぅばの課外授業-琉球語の歴史を眺める-』(ボーダーインク、2015年8月5日)。著者より恵送にあずかる。琉球語に関するエッセー集として非常に楽しめる。前半はかなり言語学的な内容、後半は言語・社会・教育など広範囲にわたる肩の凝らない内容である。

 「保栄茂」や「北谷」という地名がなぜ「ビン」「チャタン」と発音されるのかを説明した箇所は、琉球語の音変化の特徴を如実に提示してくれるし、どのような資料によってそれが跡付けられるかも丁寧に説明されている。
 「支那」という呼称をめぐる考察や、外国語のモノマネに潜む無意識の差別感情など、言語にまつわる差別についての指摘はすこぶる健全である。

 「もう一つのハングル資料」と題した一章は「漂海始末」という資料のハングル表記琉球語について述べたものでなかなか面白いが、この資料を目にしていない私にはよく理解できない箇所があった。114頁に具体的な語例が挙げてあるが、「風」という意味の琉球語のハングル表記(のローマ転写)「kanzwi」の発音を〔カゼ〕としている点、同様に「水」に対する「miczwi」の発音を〔ミズ〕としている点はそれぞれ〔カズィ〕〔ミズィ〕のミスプリなのか、あるいは当時の朝鮮語で「wi」が〔エ〕だったという前提なのか?【ここでのローマ字転写wは実際には筆記体のwのように丸い形、つまりmを上下逆にした形である】
 また115頁に、≪「鶏」が「トゥイ」ではなく、「トリ」となっており…≫とあるが、「トリ」は「トゥリ」のミスプリか。
 さらに、115頁の以下の記述、≪「すわる」という意味のところに、「メンソーリ」と書かれている。「メンシェーン」は「いる。来る。行く」の敬語で、「いらっしゃる」に相当するのだが、微妙にずれており、これが正しく書かれているかは分からない。≫では、「メンシェーン」が唐突に出てくるので、理解不能であった。

 いずれにしても、かなり楽しめるエッセー集である。ちなみにタイトルにある「しまくとぅば」は「島言葉」の意。

この記事へのコメント