清野智昭著『中級ドイツ語のしくみ』

清野智昭著『中級ドイツ語のしくみ』(白水社、2008年9月20日発行)。ドイツ語学習の初級を終えた人に、中級への橋渡しとしての文法を丁寧に説明した書である。とはいってもいわゆる文法書の体裁ではなく、項目ごとに2頁読み切りのエッセー風である。私はNHKラジオ講座の頃からの清野氏のファンで、特にその言語学的なセンス、そして難解な事項を分かりやすく説明する技術に注目していた。本書は清野氏の技量を遺憾なく発揮したものと言ってよい。エッセー風とはいえ、結構内容が濃いので、購入してから一年半の間、通勤電車でポツリポツリと拾い読みしている。語順やnichtの位置に関する部分がもっとも読み応えがあるが、時制や法に関する部分も面白い。

体験話法という項目があって、へぇードイツ語にもあるのかと思った。ドイツ語で言う体験話法(erlebte Rede)はフランス語の自由間接話法(discours indirect libre)や英語の描出話法(represented speech)と同じものらしいが、英語の高校生向け文法書などではまず説明がない。直接話法と間接話法の中間的なこの話法は日本語に訳す時にも悩む文体の一つだろう。この話法を一言で説明するのは難しいが、間接話法の従属節を独立させて、3人称主語を立てるにもかかわらず、1人称的な視点から表現する話法である。昔、仏文の学生だった頃に、フローベールの『ボヴァリー夫人』を読まされて、この自由間接話法が頻出するのに苦しんだ記憶がある。一般に、この話法は会話や新聞などで用いられるものではないが、小説などでは結構出てくる。本書ではトーマス・マンの『トニオ・クレーガー』の一節を引用している。


中級ドイツ語のしくみ
白水社
清野 智昭

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